Last Update: 2008年9月3日
第6回東海悪性リンパ腫研究会のまとめ
病理、臨床の自由討論をねらった対象症例:R-CHOPをおこなった小腸原発DLBCLの2例
症例A:回盲部に小腸壁の肥厚に由来する巨大腫瘤を持つ74歳男性でR-CHOP施行中。
症例B:全身皮下結節と回盲部腫瘤で発症した84歳男性で減量R-CHOP施行後穿孔を起こし、切除術を施行される。
<病理診断について>
2例ともDLBCLと診断された。穿孔例と非穿孔例での組織学的に差異については、穿孔症例では壁貫通性で、穿孔の理由と推測される。
<臨床の検討>
2症例とも小腸原発と考えられた。
穿孔とrituximab投与の関係についての因果関係は不明であり、化学療法の薬剤選択、投与量の検討では、case by caseとの意見が中心であった。
手術適応は、胃リンパ腫に比べて手術後のQOL低下は軽度で、胃より手術適応はあると考えられる。
診断上、従来は手術で診断されることが多かったが、最近は小腸内視鏡で診断される例も増加しており、今後手術適応を考える必要があると考えられる。
小腸内視鏡所見で、従来に比しskipした複数病変が診断される頻度は増加している可能性について、消化器内科医より、「増加傾向はなく、DLBCLでは孤在が多い」とのコメントがあった。

症例2:原因不明の高γグロブリン血症、および好酸球増多を呈した1例
69歳男性、うつ病の治療中、多クローン性高IgG血症、好酸球増多を指摘され、経過観察中に頸部リンパ節腫大を認めた症例が提示され、生検組織像と病態との関連、および診断について検討された。
(臨床検討)Castleman病との病態鑑別では、IL-6は低値で皮疹はなく、リンパ節は頸部のみで、生検後も病態は不変であった。POEMS症候群を疑う所見はなかった。寄生虫疾患は未検索であった。また、薬剤アレルギーとの関連も不明であった。
(病理検討)大小の濾胞構造がリンパ節全体に増加しているが、Castleman様所見は部分的であり、IgG4関連疾患も考えられた。IgG4関連疾患は自己免疫性膵炎、硬化型胆管炎など消化器領域から提唱された疾患概念で、リンパ節病変の報告もある。今後IgG4につき検討することになった。

症例3:縦隔リンパ節生検ではサルコイドーシス、腸間膜リンパ節生検ではDLBCLと診断された一例         
66歳男性、腹部腫瘤と腹痛にて受診され、CTで縦隔、腹腔内リンパ節の腫大を指摘。VATSによる縦隔リンパ節生検では、サルコイドーシス様の所見を認めた。その後、約6週間の経過で傍大動脈リンパ節が増大傾向にて、腸間膜リンパ節の生検を施行しDLBCLの診断となった。
(病理検討)縦隔部は、断定までは至らないが、sarcoidosis様所見であり、腹腔リンパ節のみがDLBCLであった。
(討論)文献でもsarcoidosisについて、リンパ腫との合併頻度は高くないといわれており、初回にどちらを生検するべきであったかを討論するも、approachのしやすさで選択されるという施設の意見が多かった。

症例4:EBV陽性CM陽性PTCLの治療後12年でCAEBVの臨床症状を呈した一例
30歳女性。腹痛と発熱を主訴に入院し、回腸・S状結腸切除術が行われ、T-cell lymphomaと診断された。このとき皮膚症状はなかった。42歳頃から蚊に刺された後が腫れて化膿するようになり、45歳時蚊アレルギーを主訴に再来院し、CAEBVが疑われ精査された。検査所見上anti VCA-IgG 2560倍、anti EADR-IgG 640倍、anti EADR-IgM 40倍、anti EADR-IgA 40倍。血中EBVウィルス定量:4519000copy/ml (全血), 539241copy/μgDNA (末梢単核球)感染細胞分画は同定不能。末梢血サザンにてEBVウィルス感染細胞のオリゴクローナルな増生を検出。CAEBVと診断されるも、overtなリンパ腫の再燃はなく、慎重な経過観察中である。しかしながら、原因不明の発熱が頻回となっており、sIL-2Rも若干上昇傾向にある。
(討論)蚊アレルギーの病変は現在まで残存しているが、腫瘍細胞は検出されず、臨床的にはCAEBVと考えられるも、比較的高齢発症であり、現在の状態をCAEBVと呼ぶか、PTCLの再発かどうかにつき議論があったが、今後の経過観察を待つことになった。

症例5:Pure Red Cell Aplasiaで発症したDiffuse Large B Cell Lymphomaの1例
64歳男性。貧血による高拍出性心不全にて入院。骨髄スメアで赤芽球低形成にてPRCAを疑われ、同時に大型の異型細胞が散見され、表面抗原検査では、CD5, CD10陽性B細胞のclonalityを認めた。精査にて、他にリンパ節および節外性病変がなく、CD5陽性の骨髄原発DLBCLとしてR-CHOP療法を開始した。PRCAについては、一回のR-CHOP療法で著明な改善が認められた。
(病理検討)骨髄に限局したCD5陽性B細胞の形質を持つ細胞が認められ、スメア上はかなり分化傾向のある細胞もあり、CLLなどのindolentリンパ腫の可能性も考えらた。末梢血フローサイトでもわずかにクローナルな細胞集団が認められた。骨髄cyclinD1染色は陰性で、骨髄病理では、細胞は大型で異型があり、血管内の細胞は少なく、IVLよりは骨髄リンパ腫と考えられ、血液データや臨床症状からもIVLが否定的であった。経過からは、DLBCLのindolent phaseというべきものと考えられた。

 

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